昨今注目されるシーティング技術。評価から介入さらに保険点数請求における基準など多角的に情報をリサーチしてまいります。なお、予測も含まれるのでその点はご了承ください。

姿勢評価の問題と課題

 私はこのサイトのトップページで、『「シーティングが疾患別リハビリテーション料として認められるようになる」ことは大変に喜ばしいことであると同時に、実務上では様々な混乱が生じかねない、と感じる』と書きました。その懸念の内容は、大きく分けて2つ、あります。
1:「シーティング」という作業そのものの内容について
 これもすでに本サイトの「シーティングの定義」で書きましたが、そもそも現状においては、「シーティングとは何か?」という定義自体が不明確な状態です。また今回、診療報酬請求可能とは示されましたが疑義解釈通知を読む限り、?医療機関内で『使用している車椅子の機種変更を行い、フットサポート高や背張り具合などを調整した』際には、疾患別リハとしては請求できない?という疑問が生じる内容となっています。何をやれば請求可能か?何ではダメなのか?「シーティングの定義の不明確さ」と「疑義解釈通知の不確定さ」により、未だ細かい具体的なイメージが持てない状況です。
2:効果判定の曖昧さ
 診療報酬というお金が絡む以上、シーティング作業はこれまで以上に「客観的な効果の証明」が求められるのは当然だと思います。ところが、上記の通り「シーティングの目的や作業内容」自体が不明確ですから、『効果判定のしようがない』というのが、厳密には一番正しい現状であると思います。(大まかな内容はありますよ)
 また、診療報酬疑義解釈通知においては、「(目的)車椅子や座位保持装置上の適切な姿勢保持や褥瘡予防のため」とありますから、『適切な姿勢保持』『褥瘡予防』は効果判定項目としてあげられるのでしょう。さらに通知の中では、『食事摂取等の日常生活動作の能力の低下をきたした患者に対し』という文言もありますから、『食事摂取等の日常生活動作』も効果判定項目としてあげられそうです。つまり、『適切な姿勢保持』『褥瘡予防』『食事摂取等の日常生活動作』ですね。

 『褥瘡予防(改善)』は分かりやすいです。DESIGN-R、NPUAP/EPUAPなどの褥瘡重症度評価表を用いればよいですね。

 『食事摂取等の日常生活動作』、これについては客観的に数値化する手法としてリハビリテーション医学の世界において長年、『FIM』機能的自立度評価表(functional Independence Measure)が用いられています。この中の座位姿勢に関する項目を評価法として用いることができそうです。ただし、FIMはあくまで生活機能をみているのであって車椅子上姿勢の良し悪しをみているわけではありません。食事摂取状態は、車椅子シーティングによっても変わりますがそれだけではなく、例えば食事テーブルの高さなど『(車椅子も含めた)食事環境全体の変化』によって変わりますし、もちろん、本人の『やる気』でも変わります。それ(だけ)でよいのでしょうか?という思いは残ります。

 『適切な姿勢保持』、これも分からないですね。シーティングの定義が不明確であるということは、『良い姿勢』についての厳密な定義がない、ということでもあります。何をもって「適切となった」と言えるのか?その価値基準が、そもそも不明確です。

 と、見てくると、医学的に具体的なテーマである「褥瘡」から、「生活機能」「適切な良い姿勢」と、どんどん『曖昧』になっていく事が分かると思います。効果判定もあいまいなものにならざるを得ない、ということです。

 以上の2点が、現場で混乱が生じるのではないか?と具体的に感じる『懸念の内容』です。(大渕)

支援現場、そして「シーティング」はとっても“学際的”!


「シーティング」という作業を行い得る職種や、その作業内容について関わりの出てくる職種ってどうなるか?
思いつくままあげてみると、
OT/PT/福専・プランナーさん/リハエンジニアさん/看護さん/介護さん/医師/歯科医師/STさん/歯科衛生士さん/管理栄養士さん/ホームヘルパーさん、、

まだ上げられるかもしれません。(実はこれは、私自身のセミナーへの参加者様方でもあります)

それぞれ独自の専門性をもちつつ、その枠の中から「シーティング」という作業に関わりが生じてくるわけです。
だからもしかしたら「シーティング」も、その作業を行う職種によって、特徴というかカラーというかクセというか、そんなものがにじみ出てくるかもしれません。
何が言いたいかというと、「シーティング」というのはとっても『学際的』なんですね。もともと「リハビリテーション医療」そのものが学際的なものである、と言われてきました。しかし「シーティング」は医療の枠に収まりきるものでもないですし、もっともっと学際的、です。学際的、とはどういうことかというと、、

学問分野と学際


 学問とは、知識や概念を体系立てて整理するものであり、内容の一貫性、整理あるいは理解のしやすさなどの観点から対象を限定して取り扱うのが一般的である。これが学問分野あるいは学問領域 (discipline) と呼ばれる。適度に領域が分かれた状態の方が、教育効率が上がり、研究も行いやすくなる。
 一方、最先端の研究の進展の方向性を考えるとき、従来とは異なった観点、発想、手法、技術などが新たな成果を生み出す例は非常に多い。これは従来はあまり結びつかなかった複数の学問分野にわたって精通している研究者や、複数の学問分野の研究者らが共同で研究に当たる、などによってもたらされる。これが学際的研究と呼ばれる。
 その学際的研究が発展すれば、場合によってはその後、それは体系立てられた知識として整理され、新たな学問分野を形成する可能性がある。このように新たに形成されたかされつつある学問分野を境界領域と呼ぶ。

 
つまり、「シーティング」とは、医学・福祉・工学等をまたいだ「境界領域」なんだ、ということです。境界領域にある学問には、発展段階、というものがあります。

学際的研究の発展段階


 1:Multi-disciplinary 複数の学問体系が共同で研究を行う
 2:Inter-disciplinary 複数の学問体系の共同作業により、新たな知を共有する
 3:Cross-disciplinary 複数の学問体系に及ぶ新しい専門分野が生じる
 4:Trans-disciplinary 既存の学問体系の枠組みが崩れ、新しい学問体系が生じる


 「シーティング」は今現在、この 1:〜4: のうち、どの段階まで来ているでしょうか?4:まで至ってない事は間違いないですよね?では、発展段階を少しでも推し進めるためには、、

学際的研究活動推進のためのコツ

 ・異なった専門用語を使用している自然科学・人文科学・社会科学分野の協同
 ・全行程を同行し、すべてのイベントを共有体験する「完全な共同」フィールド調査
 ・参加者全員が、意見を交換し、議論を共有する場を確保

「ピンポイント・アプローチ」

 焦点を絞った学際的研究により、多様なリアリティーを複合的に捉え、多面的に解釈し、包括的な戦略を提示する。
(多様で複雑、かつ膨大な対象を多面的に分析することは実質的に困難である)

実例と対応

求められる評価

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